『舞妓Haaaan!!!』(07)、『謝罪の王様』(13)などでもタッグを組んでいる主演・阿部サダヲと水田伸生監督の最新作。しかも、予告編が阿部の演じた牧本の変わり者のキャラを必要以上に強調していたから、あ~またまたハイテンションなコメディなんだ~と思い込んでいたのだが、いい意味で裏切られた。
確かに、牧本は変わっている。孤独死した人の葬儀を自費で行い、遺族が引き取りに来ない遺骨を市役所の自分のデスクの下に一時保管したりするのだから。でも、故人を慈しんだり、その人のかけがえのない人生や多くの出会いを敬う純粋な気持ちは合理性ばかりを求める現代人が忘れがちな大切なものだ。
確かに、牧本は変わっている。普段の生活も独特で、そんな彼を阿部サダヲが独自の空気感で淡々と体現しているから、どんどん彼に興味が湧いて引き込まれ、時にはクスッと笑ってしまう。
そして、劇中で牧本と出会う人たちと同じように、ちょっとした気づきをもらうことになる。そう、牧本をただの変わり者と思うか否かで、観た人の人間性や価値観が逆に分かるというわけだ。
豪華で多彩な共演陣の中で個人的にいちばん印象に残ったのは、牧本に振り回される刑事の神代に扮した松下洸平。これまでとは違う彼の短気なキャラが、マイペースな牧本と絶妙なハーモニーを奏でている。