ペルシャン・レッスン 戦場の教室
『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』 (C)HYPE FILM, LM MEDIA, ONE TWO FILMS, 2020
ホロコーストを題材にした映画は、毎年必ず何作かある。何百万人もが犠牲になったのだから、題材は無限に近いのだ。
今作は、記憶力のおかげで助かったユダヤ人の物語だ。
ナチスの親衛隊に捕まったユダヤ人青年が、たまたまペルシャ語の本を持っていたことから、自分はペルシャ人だと偽り、処刑を免れる。収容所の大尉は、戦争が終わったらテヘランで料理店を開こうと考えており、その青年からペルシャ語を習うために、処刑させなかったのだ。
青年はペルシャ語など、できない。しかし生き延びるために、毎日数語ずつ、ペルシャ語をでっち上げて、「パン」は「◯◯」、「皿」は「△△」という具合に教えていく。大尉はそれを覚えていく。何カ月もかけて、2000語以上もの単語が創作され、簡単な会話ができるようになる。もちろん、この2人以外には通用しない言語だ。だが本当のペルシャ語を知っている人が収容所にはいないのでバレない。
教えるほうも、創作した語の意味を覚えていなければならない。同じ語を2度は使えない。だから、創作力と記憶力の双方が必要だ。
何もないところから、単語を作るのは難しい。青年は、収容されているユダヤ人の名簿を作る仕事をしていたので、その人名をもとにして単語を作っていく。これが連合国によって収容所が解放された後、あることに役立つ。この伏線が見事だ。
そして、ドイツの大尉の皮肉な末路。
そこには命をかけたドラマがあるので、ホロコーストものは秀作が多い。これもその一編となる。