劇作家・清水邦夫が昨年亡くなり、演出の蜷川幸雄が他界して6年目となった。同時代の盟友だったふたりが演劇界に一石を投じたのが『ぼくらが非常の大河をくだる時』である。清水がこの作品で岸田國士戯曲賞を受賞。昭和47年(1972年)に初演され、今年が50年目だ。渡辺えりがオフィス3◯◯の公演として演出する。当時と同じ10月、所縁のある新宿での上演だ。
背景の1970年代は動乱、嵐の時代だった。安保条約への抵抗、沖縄返還闘争、あさま山荘事件。その時代の中、清水は反体制を主張する若者群像を次々と描いていた。山形にいた渡辺えりは、そんな清水戯曲に刺激を受けたという。
最初の置かれた舞台は深夜、男が男を求める都内の公衆便所である。狂気に陥った詩人である弟、その弟の夢を演じる兄。敗れた革命の夢、そして敗北感。渡辺は清水作品のいくつかを取り込み、副題にある「新宿薔薇戦争」を描いた。
初演で兄が石橋蓮司、弟が蟹江敬三だった。今回は父が扉座の岡森諦、兄弟は吉田侑生と岩戸秀年。タンゴの生演奏が流れ、ダンスもある。“アングラ演劇感”が充満するスリリングな舞台となるだろう。