岸井ゆきのの力強さと存在感はどうだろう!ボクサー役で、しかも耳が聞こえないというハンデを背負う難役。『Coda コーダ あいのうた』の家族のように明るくふるまうこともなく、ほとんどしゃべらずに、心の中で様々な葛藤を抱えて生きているヒロインを体現している。すべて目で語る岸井の芝居に引き込まれるが、見どころはやはりボクシングシーン。複雑なスパーリングシーンにくぎ付け。一体彼女はどれだけのトレーニングを積んで来ているのか?拍手を送りたくなるほどなのだ。一方、三宅唱監督は試合中『ロッキー』のようなエモーショナルな音楽を一切かけない。主役はボクシングではなく、岸井ゆきのの心そのものなのだと言っているかのようだった。