日本にただ一点しかないボッティチェリによるテンペラ画《美しきシモネッタ》だけを展示するというなんとも豪華で強気な展覧会。たった1枚の絵だけが展示されている展覧会なんて、滞在時間5分で終わってしまうのでは……という心配はまったく御無用。なぜなら、ルネサンスの巨匠、ボッティチェリの筆はとにかく繊細で美しく、吸引力がすごい。時間が許す限り見つめていられるのです。そして、作品周辺に並んだ解説パネルも面白い。シモネッタはどのような人なのか、ボッティチェリはシモネッタを他の作品ではどのように描いていたのか、ボッティチェリ以外の画家はどのようにシモネッタを描いたのか、そもそもこの絵はどこからどのようにして丸紅ギャラリーにやってきたのか……。たった一枚の絵で、これだけ深く研究することができるのがすごい。そして、それらを読み込んでからあらためて《美しきシモネッタ》を見ると、見え方が変わってくるから面白い。1枚の絵だけを時間をかけてずっと見る、とても贅沢な体験なのでぜひどうぞ！

22/12/6(火)