非常宣言

『新感染 ファイナル・エクスプレス』でもそうだったが、韓国映画は人々の感情の機微をさまざまな角度で捉えるのに長けている。それはパニック映画で特に必要とされることで、ただ緊急事態をどう乗り越えるかを描くのではなく、そのとき、人々がどのような状況のときにどんな感情が生まれ、どんな判断をし、どう助け合えるのかを見せられるかで後世に残る映画となるのだ。 本作ではコロナ禍の世界だからこそ誰もが共感する問題を、今までさまざまな映画で描かれてきた手法はもちろん取り入れながら、嫌悪感を抱かせないほどの俳優の演技力と多くの登場人物の見せ場を作ることで、「人それぞれの選択がある」と伝える作品になっていた。 それもこの企画に賛同したイ・ビョンホン、ソン・ガンホ、チョン・ドヨンという海外でもその演技力が知られる名優たちによるどっしりとした存在感が軸になっているからかもしれない。飛行機内のバイオテロという脚本により物語は世界を巻き込み、自分ごととして世界中の観客が考える構成は、韓国映画が世界レベルである理由を意味している。