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水先案内人のおすすめ

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恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

チョコレートな人々

なぜにチョコレート? 人を、社会を、人生を、照らし出す作品を送り出してきた「東海テレビドキュメンタリー劇場」第14弾は「理想を追い求めるチョコレートブランド」の映画だと知り、ちょっと不思議に思っていたのだが、見て納得。愛知県豊橋市に本店がある「久遠チョコレート」代表の夏目浩次さんが追求するのは、おいしさだけではない。心や体に障がいを持つ人をはじめ、ちゃんと働いてちゃんとお金がもらえる場を見つけられずにいる人たちのために、正当な機会と場をつくる。本格的な味でお客さんも満足させて経済を回す。そりゃあできればいいよね、と誰もが思ってきたことを、夏目さんは現実にしている。150種類もあるというカラフルなチョコレートは、久遠チョコレートのありようそのものと重なるものであることが見るほどにわかってくる。 もちろん甘いだけの話ではない。夏目さんは、苦い思いも重ねている。地元テレビ局として、夏目さんがチョコレート屋さんになる前から重ねてきた取材映像がものを言う。でも、失敗しても「温めれば、また作り直せる」。繰り返されるナレーションは、チョコレートのことなのだけれど、それだけじゃない。みんなの幸福という理想の味。それが冒頭で映し出されるおいしそうなチョコレートテリーヌと結び付いて、きっちり心に残る。味わってみたいではないか。

22/12/26(月)

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