首都圏にありながら交通の便が悪く、行きたくてもなかなか行けない美術館のひとつに原爆の図丸木美術館がある。その名のとおり丸木位里・俊夫妻による「原爆の図」14点が常設展示されているだけでなく、年に5本ほど刺激的な企画展を開いているのだ。
現在開催中なのが母袋俊也の個展。母袋は東西の宗教画などをモチーフに絵画形式を問題にしてきた画家。今回は「原爆の図」の第3部「水」の画面構造を分析し、同サイズのパネルに再構成した大作を展示。また、パンデミックを暗示させるグリューネヴァルトの「磔刑図」を換骨奪胎した旧作と新作を並べ、上方には空の絵を掲げ、床に梯子上の作品を置くなど、展示室全体をひとつのインスタレーションに仕立て上げている。