映画 イチケイのカラス
映画『イチケイのカラス』 (C)浅見理都/講談社 (C)2023 映画「イチケイのカラス」製作委員会
期待通り。弁護士モノ、検事モノは数あれど、裁判官が主人公の映画はそうそうない。だからいい。とぼけた味の裁判官が、人に寄り添う判決を下すために「職権を発動」し、自ら現場へ出向いて捜査を行う。おせっかいで迷惑な裁判官を竹ノ内豊が生き生きと演じ、夫婦漫才のようにぶつかりあっている判事補(黒木華)とのバトルも実に楽しい。今回は彼女を中心に物語が回るので、初めて見る人もすんなり入れるのが強みだ。扱う事件も大型船と自衛隊艦の衝突沈没の真相解明とスケールがUP。そこに、いくつもの事件が意外な形でからむ面白さ。法で裁きにくい善悪がある。正義は時に人を苦しめる時だってある。軽いコメディと思っていると、深いところに持っていかれる喜びがあった。