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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

レジェンド&バタフライ

信長のように、これまでに何度も映画やテレビドラマになっている題材を選ぶと、「なぜいま信長の映画なのか」と、「新しさ」が問われることになる。この映画では、「弱い信長」と、タイトルが示すように、信長とその正室・濃姫(帰蝶)の関係に焦点が当てられているのが最大の新味。 脚本を書いた古沢良太は、今年の大河ドラマ『どうする家康』も書き、どちらもジャニーズの俳優が主演しているだけでなく、戦国武将を「弱さのある人間」として描く点でも共通しているようだ。 木村拓哉は、「人間として弱い信長」という難役を、木村自身の「かっこよくなければならない」という宿命を背負いながら演じ、この矛盾それ自体が、信長の苦悩とオーバーラップし、新しい信長を描き出した。 綾瀬はるかは、信長に従う女ではなく、リードしていく女性を堂々と演じ、アクションシーンの見せ場もたっぷりとある。 弱い信長と強い濃姫という2人の関係から、桶狭間の戦いの「知られざる真相」が描かれる。これが前半の山場。 ラストは、当然、本能寺の変となる。なぜ明智光秀(宮沢氷魚)が信長を討ったかという日本史最大の謎への、これまでにない解釈がなされ、これは意外性があって面白かったが、あまりにも短い。本能寺だけに焦点を当てて、2時間の映画にして丁寧に描けば、傑作になった気がする。 3時間弱で信長の30年を描くのは無理があり、2部作か3部作にしたほうがよかったのではないだろうか。 歌舞伎界期待の新星、市川染五郎が森蘭丸で映画初出演しており、その意味で歴史に残る映画になるかもしれない。

23/1/11(水)

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