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水先案内人のおすすめ

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春日 太一

映画史・時代劇研究家

野獣の血

信頼と安心の韓国産やくざ映画は、今回も期待を裏切らなかった。 釜山の外れにある小さな港町の利権を巡り、争う巨大組織と地元やくざ。アウトロー稼業から足を洗おうと事業を始めるも、抜けることを許されない主人公。恩人を裏切ることができるか、友を殺すことができるか……という葛藤。こうした設定は決して珍しいものではく、このジャンルを見慣れた方には既視感が強いだろう。 ただ、それが全く気にならない。 巧妙に仕組まれたプロットが主人公を追い込む、ヒリヒリとした展開。スタイリッシュな映像と泥臭い暴力描写によって切り取られる、熱い人間ドラマ。もはや「さすが韓国映画」といえる丁寧な作りにより、見応えたっぷりの濃厚なノワール映画に仕上がっているからだ。 義理、人情、欲望、怒り、絶望。さまざまな感情にがんじがらめになりながら苦しみ抜き、多くの大切なものを失い、心ならずも手を汚していくしかない主人公がとにかく切ない。ここまでさせるか……という作り手サイドの徹底ぶりがステキだった。

23/1/24(火)

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