逆転のトライアングル
Fredrik Wenzel (C) Plattform Produktion
リューベン・オストルンド監督の人へのあくなき探究心が好きだ。それは映画作りに表れていて今作『逆転のトライアングル』は、人間が権力を手にしたとき、私利私欲に塗れる過程をどこまでも楽しむ悪趣味な脚本が魅惑的と言えるからだ。だから娯楽かつ作家性を重視するカンヌ国際映画祭でパルムドールを2年連続で受賞したのも納得の結果。
豪華客船に好んで乗る乗客の心理、豪華客船を選び働く者の心理、まさに主従関係にあるこのシチュエーションが逆転したら何が起こるのか? 独特のウィットで展開される人の不幸を見て笑う観客の私たちは果たして善人なのか? 後半になるにつれ、自分はハッピーエンドを望んでいるのだろうか?とまで考えてしまう自身のダークサイドと向き合うハメになる本作は、よくある漂流モノでありながらそうない人間の生存戦略におけるサル山のサル合戦だった。