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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

屋根の上のバイオリン弾き物語

子供のころから苦手ジャンルだったミュージカル映画。まともに向き合った最初の映画が『屋根の上のバイオリン弾き』だった。大好きだった『夜の大捜査線』のノーマン・ジュイソンが監督しているからという消極的な姿勢で見始めたのだが、映画が始まるやいなやバイオリンの妙なる音色とユダヤ人一家の受難のドラマに魅せられた。 映画『屋根の上のバイオリン弾き』は、ショーレム・アレイヘムのベストセラー小説『牛乳屋テヴィエ』を基にしたブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品で、監督を手掛けたのがノーマン・ジュイソン。舞台同様、映画も世界的に大ヒットし、本作はその製作50年を記念したドキュメンタリー映画だ。ジュイソンをはじめ、音楽のジョン・ウィリアムズや主人公テヴィエを演じたトポル、3人の娘役たちへのインタビューを交えて、セットや撮影に凝らした数々の工夫などを丹念に追い、映画化の舞台裏を解き明かしていく。 ジュイソンが、「自分の監督作で最も気に入っているシーン」と語る「ツァイテルの結婚式」。夕闇の中をキャンドルを手に式場に向かう村人たちを捉えた美しいショット、『サンライズ・サンセット』の感動的な歌唱などなど、今見てもジュイソンの演出は見事というしかない。 ジュイソン監督95歳(本作撮影時)、その元気はつらつぶりに感動するとともに、劇中のアイザック・スターンの名演奏が今も蹂躙され続けているウクライナの人々の怒りと悲しみを訴えているかのように錯覚させられる、複雑な思いにかられるドキュメンタリー映画だ。

23/3/30(木)

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