介護士が高齢者を42人も殺めていた事件が発覚する。犯人の斯波(松山ケンイチ)は労力を惜しまない、真面目な勤務態度で知られる職員だった。検事の大友秀美(長澤まさみ)は彼を裁くことになるが、斯波の犠牲者となった家族は、シングルマザーで仕事を掛け持ちしているような、介護に限界がきている人々ばかりだった。
この映画は厳しい現実を目の前に突き付けてくる。経済的に厳しい人ほど、利用できる介護システムが限られること。そのため仕事を休むわけにはいかず、認知症の親が徘徊するような事態が増えてしまうこと。物価も上がり、経済的に苦しい家庭はますます増加するだろう。本作の斯波と秀美のクライマックスの対話は、そういった人々の悲痛さを踏まえた、善悪を超えた共鳴の叫びに聞こえる。