トリとロキタ
(C)LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM - FRANCE 2 CINEMA - VOO et Be tv - PROXIMUS - RTBF(Television belge)
ダルデンヌ兄弟の監督作を観た後の印象は「日焼け」のそれに似ているかもしれない。光を浴びている(スクリーンを見つめている)間はそれほど感じないが、後日焼けた肌(心)が“ヒリヒリ”し始める。新作『トリとロキタ』もそんな感覚が残った。いや、“痛み”というべきか。
ベナン出身の少年トリとカメルーン出身の10代後半の少女ロキタ。2人はアフリカからヨーロッパに流れてくる際に知り合い、ベルギーのリエージュで“姉と弟”として暮らしている。トリはビザを取得しているが、ロキタにはない。お互いに支え合いながら、普段は客に麻薬を届ける危険な仕事に手を染めている。ある日、ロキタは偽造ビザと引き換えに、組織の指示で大麻栽培を手伝うことに……。
音楽に頼らず、主演俳優は演技経験がほぼない―。このダルデンヌ兄弟の作品の特徴ともいえる要素は本作でも同じ。映像に込められた感情がストレートに伝わってくる。“姉と弟”という設定からテオ・アンゲロプロス監督『霧の中の風景』(1988年)を思い出した。同様に胸の深いところまで人生の悲しみが沁みてくる作品だ。この名作に「哀切」という言葉を当てるとしたら、『トリとロキタ』は「痛切」になるだろうか。