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独裁者たちのとき

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こんなことまで映画はできるのかと感心する人もいるでしょう。ヒトラー、スターリン、ムッソリーニ、そしてチャーチルという20世紀の独裁者たち4人が、なんと黄泉の国から舞い戻り、お互いの悪行を嘲笑、揶揄し、己の陶酔に浸っているという醜悪な作品です。 仕掛け人はロシアの鬼才、ソクーロフ。驚かされるのは独裁者たちのなめらかな映像がAIなどによるものではなく、すべて丹念に探し集めたアーカイヴ映像だけで構築されていることです。そうだとすれば4人の動きがリアルなのは当然だし、セリフも過去の発言や手記をもとに引用しているので、彼らはますますあの世から抜け出し、自身の権力をほしいままにして再び国民に総動員をかけようとしているかのように見えます。 興味深いのはソクーロフ監督の歴史観です。「歴史は、それ自体が繰り返すこと、人類が同じふるまいを避けることができないことを示している。若い人たちは私たちと同じ道を再び歩む。明らかに、手段としての戦争が、社会的、政治的、歴史的紛争解決手段として、依然として主要であり続けているためだ」 同時に「私が聞くべきことは、より人間に向けられている。なぜ人はそれ(戦争)を選ぶのか、ということだ。私は自分の作品で、力を手にした人間は何よりもまず惨めであり、惨めな人間は非常に危険だということを示したい」との問いかけもしています。こう紹介するだけで20世紀だけでなく現代の独裁者たちの大半も同じ顔をし、行動に移そうとしていることに気づくのです。 ロシアの映画文化は、今危うい状況に置かれています。政治と文化のどちらを残したい?と問われれば、間違いなく文化を推します。アレクサンドル・ソクーロフという素晴らしい監督を育んだ国ですから。