Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

それでも私は生きていく

街角を歩く女性をカメラが追い、場面は中庭があるアパートの玄関先から室内へと順々に切り替わる。窓から注ぐ昼間のやわらかな光で満たされた部屋の中では、親子の日常的な会話が進んでいく。“カチャカチャ”という食器の音、床を歩く足音…。BGMはなく、そんな生活音しか聞こえてこない。一連のシーンを見て、直観的にある監督の名前が浮かぶ。仏ヌーヴェルヴァーグの一人、エリック・ロメール(1920~2010年)だ。 改めて、本作のミア・ハンセン=ラブ監督が“ロメールの後継者”とも言われたことを思い出す。ロケ中心の自然光による撮影で捉えた風景、同時録音で拾われる様々な街の音。これらを下地に、男女の繊細な恋愛模様がつづられる点も共通している。 舞台はパリ。夫を亡くしたサンドラ(レア・セドゥ)は通訳の仕事をしながら、8歳の娘リンと2人で暮らしている。離れて住む父のゲオルグ(パスカル・グレゴリー)は哲学の教師だったが、神経疾患で記憶や視力にも支障をきたし始めていた。老いてゆく父に困惑を隠せないサンドラはある日、旧友で宇宙化学者のクレマン(メルヴィル・プポー)と偶然再会、この既婚男性に惹かれていく。ときめきと不安。異なる感情が画面に漲る。

23/5/3(水)

アプリで読む