探偵マリコの生涯で一番悲惨な日
(C)2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会
「新宿・歌舞伎町が舞台の暗黒映画」と言えばそうなのだけど、いきなり宇宙人が出てきて、一瞬、SFかと思わせる。シリアスかと思えばギャグ、ギャグかと思えばシリアスで、つかみどころのない映画。冗談かと思った宇宙人が後半にまた登場して、壮大なSFになりかける。
伊藤沙莉演じるマリコは、歌舞伎町でバーを営んでいるが探偵でもある。この店に出入りする人たちの群像劇で、マリコは狂言回し的な存在。
本物の忍者や、子どもの頃から殺し屋になるべく育てられた姉妹という、現実離れした人物たちがとてもリアル。かえって、ホストとかそれに入れあげるキャバ嬢やヤクザなど、いかにもいそうな人のほうが、ちょっと嘘っぽく描かれる。
貧困や児童虐待といった社会問題も描かれているのだが、深刻にはならない。
タイトルから、「ある一日」を描いた映画かと思ったが、そうではなかった。たいした問題ではないけれど。
笑える映画だけど、笑っていていいのかなとも思わせる、その緩急が見事。その嘘っぽさを含めて、「いまの日本」なんだと思う。