この夏のラース・フォン・トリアー大復活祭は、海外のファンも羨むほどに豪華だ。なんと彼の学生時代の短編『ノクターン』を含む15作品(長編14本は4K修復版)が一挙公開になる。どれもハズレはないので全作必見と言いたいが、ここではレトロスペクティブとは別に、新作の『キングダム エクソダス〈脱出〉』についてお勧めしたい。
トリアーが90年代に撮ったカルトTVシリーズ、『キングダムⅠ&Ⅱ』の続編にあたる本作(5話構成)は、できれば前シリーズをご覧になってから観たほうがいい。そうでない場合はあらかじめ予習しておいたほうが、繋がりがわかって楽しめる。
元沼地に建てられたいかめしい巨大病院で起こる奇怪な現象と、“まともでない”人々による騒動。ホラーとコメディを行き来する中で、この監督の常軌を逸した発想、屈折したユーモアと自虐性が開花し、異次元の世界に導かれる。
ウド・キアーの勇姿はとくに、涙なしには観られません。