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水先案内人のおすすめ

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柔軟な感性でアート系作品をセレクト

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

リアリティ

2017年のある土曜の午後、週末の買い物を済ませたリアリティ・ウィナーという25歳の女性が、ジョージア州オーガスタの自宅前で待っていたFBI捜査官による尋問を経て、逮捕された。本作は、その間のやり取りをそのまませりふに使った、異色の「ドキュドラマ」。ウィナーは、16年の米大統領選へのロシアの介入疑惑に関して、国家機密の漏洩の罪に問われた実在の人物だが、本編中、そのことについての説明はない。捜査員が録音していた記録をもとに、拘束された日のやり取りを見せるだけ。捜査官たちの、相手を気遣っているようでいて有無を言わせぬ巧妙な言動。平凡なたたずまいの主人公の注意深い対応。表面上はなごやかだが、一触即発の気配をはらんだ会話の緊張感が、役者たちの巧みな演技、そして緩急自在の映像のリズムによって膨らんでいく。せりふはあくまでも記録によっているため、主人公の心情や真相といった核心に触れる描写が少々そっけなく思えるが、主人公の切実さが想像できるだけの材料は映像の中にそろっている。潔く果敢な一本だ。

23/11/20(月)

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