ディス・マジック・モーメント

映画好きを自認する人は多いですが、中にはミニシアターで上映される作品は全部見たいというこだわり派や文化財的価値に注目する人もいます。   本作品は「シネマドリフター」（映画流れ者）を名乗るリム・カーワイ監督が北は北海道浦河町の大黒座から、南は沖縄の首里劇場まで22館のミニシアター（閉館、一部休館中なども含む）を回って関係者にインタビューした貴重なドキュメンタリーです。   リム監督を日本全国の映画館を巡る旅へとかりたてたのは、コロナ禍の嵐の中で次々と映画館が閉館していくことへの危機感でした。とりわけ規模が小さく体力のないミニシアターには打撃が大き過ぎました。   一口にミニシアターといっても、その成り立ちは一様ではありません。たとえばクリーニング店を兼ねていたり、家族経営だったりと色とりどり。あるいはクラウドファンディングを活用して資金作りに協力する人によって継続している所もあります。   スタッフに共通するのは映画が大好きなこと。幸いなことにミニシアターは中国や台湾、韓国、インド、タイといったアジア映画を積極的に受け入れているので、見る機会も増えています。この作品からはアジア映画への監督のエネルギーや受け止める側の熱い思いが伝わってきます。