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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

ゴジラ-1.0

いかに恐ろしく、時にカッコ良くゴジラを見せるか。山崎貴監督は幼少期、ゴジラに恐怖心を覚え、それでもカッコ良いと思えたそうだ。これはスピルバーグの『ジョーズ』を見た時に似た興奮だったのかもしれない。現に今回のゴジラは海洋バトルが多く、ゴジラの姿をはっきり見せない上での恐怖心を煽る演出もあるし、小さなボートでゴジラに戦いを挑むシーンは完全に『ジョーズ』を彷彿させる。それに海上シーンを本物の海で撮影したこだわりは、俳優の演技と波のリアルさは本物が一番だと踏んだからだろう。更には『永遠の0』で研究した戦闘機のアングルも活かされ、アトラクションのような視点でゴジラを楽しめるのだ。 しかもVFX技術に長けた山崎貴監督率いる「白組」だからこそ、様々な表情のゴジラを“間近で見られる”というダイナミックな映画を完成させている。さらに第1作目となる1954年の昭和『ゴジラ』の前の物語というので、同じ大きさ50メートルにこだわったが、完成したCGモデルを正確に測ったら50.1メートルになったというのもなんだか微笑ましいエピソードだ。 他にも1作目にオマージュを捧げるゴジラアタックのシーンがあるのには驚かされる。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで昭和の街を見事に再現したチームの手腕が光る当時の情景。もちろん西武園ゆうえんちの「ゴジラ・ザ・ライド」も山崎監督が手がけているので、「昭和とゴジラ」の組み合わせは実証済み。当時の建物の高さや壊れ方、街並みまで見事に再現してくれた。そして今、戦後直後の激動の時代を映画化する意味として、「お国の為に命を捧げる」ではなく、「共に生きる」というテーマが前面に押し出されていることがセリフや行動で強く伝わってくるのだ。まさに人々が連携すること。私は「黒い雨」を降らせたことが反戦のメッセージだと捉えている。

23/11/8(水)

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