この監督達は“見える”人なのかもしれない。数々のホラー映画を観てきたが、観客にとって程よい時間で端的に、かつ必要なシークエンスのみを並べて、ホラー映画のノウハウを詰め込んだ映画はかつてない。冒頭の5分で怪現象をサラリと描き、問題はその後の若者達の行動が事態を悪化させると伝える構成にも感服。しかも“霊と繋がる手”はどこから来たのか?という問いに対しても必要最低限の説明で終わらせてしまう潔さ。考え方によっては、“霊と繋がる手”の原点を追う物語だって描けるところを、あくまでもアイテムとして映画に登場させるのも潔く好感度が高い。
回想シーンも無ければ、霊体によるポルターガイスト現象にも頼らない。間違いなく新しいスタイルの低予算映画であり、なのにゴア描写もほぼ無く、俳優の演技で怖いのだ。こんなに映画としてのクオリティの高いホラー映画にはそうそう出会えない。その理由に、ホラー映画好きの監督達の多くはどうしても「怖がらせたい」「残虐なシーンを撮りたい」と思ってしまうらしく、ホラーを利用してギミックに凝ってしまうからだ。そうなると、本来、一番怖いであろう“人間の心に闇”に焦点が合わないままお化け屋敷映画が完成する。
本作が素晴らしい点は、物語が進むにつれ、あるメッセージが見えてくる。これはネタバレになるので書けないが、もしかしたら監督達は、死霊のある共通点からこの物語を思いついたのかもしれない。そして本作でその共通点に気づいた若者は、間違いなく“それ”をやらないと思うからだ。そういった意味で、監督らは“死者が見える”のではと踏んでいる。脚本も見事。社会的メッセージも潜む、理想のホラー映画だ。