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平辻 哲也
映画ジャーナリスト
99%、いつも曇り
23/12/15(金)
アップリンク吉祥寺
昨今は「生きづらい世の中だ」と言われる。そんな中でも、世間とは違った感性の持ち主は一層、生きづらさを強く感じるだろう。 主人公はアスペルガー傾向のある45歳の女性、一葉。母親の一周忌で叔父から「子供はもう作らないのか」と言われ、心を大きく揺るがされてしまう。一葉には既に生理は止まっていて、流産の経験もあり、夫が子供を欲しがっているように映る。しかし、アスペルガーが子供に遺伝することにも怯えている。 何事も思い通りには動かない。一葉は心も体も傷だらけにして生きている。監督・主演は俳優・瑚海みどり。これが長編映画デビュー監督作。15年前に、他人から「あなたはアスペルガーだと思うよ」と言われた一言が、この作品のきっかけだという。撮るべきテーマを持った作家は強い。 いろいろな困難はあるが、一葉は、不幸ではない。言葉少なに支える夫がいて、周囲には温かく見守る友人がいる。最後は晴れやかな気持ちにさせる。
23/12/15(金)