吉田六郎、と聞いても心ときめく方は少ないかも知れない。日本科学界の巨人、「雪博士」中谷宇吉郎の指導のもと、北海道大学の低温科学研究所で雪氷の撮影に従事してきた吉田は、戦後は科学映画の監督としても活躍し、数多くの名作を手がけた。この展覧会では、吉田が取り組んだ雪の結晶の仕事が、写真と映画の両方で紹介されている。
会場では、東映教育映画部が製作した吉田の映画『雪・結晶の観察』(1960年)が全篇観られるが、この作品はカラー映画における雪の撮影術を確立した国産科学映画のひとつの到達点である。つややかな結晶表面と複雑な内部構造の両方を捉えることのできる「一光源二色照明法」を、吉田はこの時完成させた。...