ハリウッドが本気を出して作った、日本を舞台にした歴史超大作である。そして、そのど真ん中に君臨するのは、真田広之だ。
この点だけで、全面的に推せる。
しかも、作品としても面白い上に真田広之の魅力を存分に堪能できるのだから、申し分がない。
秀吉の死後から関ヶ原にかけての、権力闘争を軸に物語は展開される。真田が演じる徳川家康をインスパイアした主人公・虎永をはじめ、主要な登場人物は歴史上の誰かしらを模した架空の人物だ。そのため、人物の設定や関係性などは史実と異なる点は多々ある。本作は、そうした考証に囚われることなく、徹底したエンタテインメントに浸ってほしいし、また浸れる作品だ。
今の時代劇が失った魅力に満ちているのが、何より素晴らしい。
大坂城とその城下町や網代の漁村、さらには各屋敷の広間や書院…映し出されるセットはいずれも大規模かつ壮麗で、その造りの贅沢さは1950年代~60年代の時代劇映画黄金期を彷彿とさせる。また、権謀術数の渦巻くドラマ展開は、かつての大河ドラマのような緊迫感だ。
演じる俳優たちも良い。平岳大、西岡徳馬、浅野忠信らの経験豊富な脇役陣が、“ちゃんと戦国武将に見える芝居”をしているため、そのぶつかり合いが重厚に締まっていた。
ヨーロッパの宗教対立や海賊まで巻き込むスケール感も、江戸情緒ばかり追うようになる前の時代劇にはあった“あるべき姿”だ。
つまり本作は、時代劇本来の魅力を現代の映像技術を駆使して表現する、いわば“時代劇ルネサンス”と言える。
そして、なんといっても真田広之だ。
動きの少ない役柄ではあるが、見事な着こなし、身のこなしは後に“天下人”たる人物にふさわしい気品を見せつけている。また、葛藤を抱えつつも本心を見せないまま危機を乗り越えていく様の人間味は、大河ドラマ『太平記』で演じた“将軍“足利尊氏役を思い出す。しかも、『太平記』から約30年を経たことで、さらなる円熟の芝居をもって、圧倒的なカリスマ性を見せてくれるのだ。
動きも衰えていない。立ち回りの場面での刀の扱いは相変わらずカッコいい。そして嬉しいことに、若き日の真田の代名詞でもある“豪快なダイブ”も披露してくれている。それは第三話のラストにあり、物語の重要なシーンにもなっている。長年のファンなら、絶対に見逃せない。
真田広之の魅力を心行くまで堪能できる時代劇を、ハリウッドが作ってくれたこと。真田広之がハリウッドで、これだけのスケールの時代劇を成し遂げてくれたこと…。
夢にまで見た、あまりにステキな黒船来航だった。
『SHOGUN 将軍』 2/27(火)〜 ディズニープラス「スター」で配信