まったく予備知識なしに本作を観て、あとから山田太一の小説、『異人たちとの夏』をベースにしていると知って、その違いに驚いた。アンドリュー・ヘイ監督は、主人公をホモセクシュアルの男性にすることによって、世界から隔たるその孤独と絶望を一層深いものにしている。
同性愛者ゆえの生きにくさを抱え、早くして親とも死別し甘えられる家族を失った青年は、過去を振り返ることでしか安らぎを得られない。だがある日、隣人だという不思議な青年が現れ、彼の心の扉を開けようとする。
個人的にフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「パワー・オブ・ラブ」が流れた時点で降伏。抱き合う男ふたりの光景に、80年代ゲイ・ピープルにとって愛の讃歌だったこの曲を使うなど、どセンチメンタルだけど、この直球メロドラマの純粋さに心が揺さぶられるのを、どうにも止められなかった。