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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

からかい上手の高木さん

ドラマからの映画化とは思えないたっぷりとしたシーンの連続。しかも長台詞で繰り広げられるふたりの関係を映し出すカメラ。会話劇ながら1シーンがドラマらしからぬ長さで、それがドラマに続き今泉力哉監督だからなし得る構成だと納得する。場所を大事にしながらそこに居る人々の互いへの感情や自分の思いを綴っていくスタイルは今泉作品の定番スタイルであり、詩的にさえ感じてくる。 小豆島という海に囲まれた島で生徒とまだ若い先生が人と関わりながら少しずつ成長していく光景は、『二十四の瞳』とはまた違う更にミニマムな交わりで、不器用な人間たちが自分で拗らせてしまった感情を誰かに手助けされながらほどいて行くようにも思える脚本だ。 特に不登校になった生徒を演じる齋藤潤は、『カラオケ行こ!』とはタイプの違う生徒として自然と存在しつつ、やはり目の動きが上手い。そんな彼と対峙する高木さん演じる永野芽郁は、立ち姿だけで、明るそうなのにどこか悲しげな雰囲気を醸し出す絶妙な演技で観客を魅力する。何より劇中で一番、人の気持ちや自分の気持ちに鈍感な主人公を演じる高橋文哉は、苛立ちのギリギリを攻める母性をくすぐる演技で飽きさせないという芸達者な俳優たちにも唸った作品だった。

24/5/8(水)

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