旅先で知り合った家族と意気投合し、昼食や行動をともにする。ただ、時間が経つにつれ、相手に合わせるうちに疲れたり、居心地の悪さを感じたり……。そんな感情を併せ持つ人もいるだろう。
『胸騒ぎ』は、デンマーク出身のクリスチャン・タフドルップ監督の実体験がベースになっている。夏に家族と休暇を過ごしたイタリアで、ある家族に出会い、半年後には自宅を訪問。「ブドウ畑で感じていた相性の良さは消え失せており、僕たちはたくさんのことを我慢する⽻⽬になった」という。
本作も夏のイタリアから始まる。ビャアンとルイーセはデンマーク人の夫婦。幼い娘とともに旅を楽しんでいた。出会ったのが、幼い男の子がいる同世代のオランダ人一家。後日、オランダの田舎町にある自宅へ誘われ、滞在するが…。
2家族のやり取りには、名作『東京物語』でも感じたような“気まずさ”が漂う。笑顔の裏で不快な心情がにじみ出る。観ていて胸がざわついた。“いたたまれない思い”になった。監督の演出に見事にはまった証しだろう。
屋内を舞台にした心理劇のような体裁で物語は進むが、その感想は見事に裏切られる。「北欧発の最狂ヒューマンホラー」のキャッチフレーズに得心がいく。