ミュージカルの舞台を撮影し、一本の映画にしたという趣向の作品。「舞台を撮影しただけなんて芸がないなあ」などとあまり期待せずに観はじめたら、冒頭の歌唱シーンから思いきりひきこまれ、最後まで一気に観た。最高に面白い。ニューヨークの「オフ・ブロードウェイ・アライアンス最優秀ミュージカル賞」を受賞している作品だという。米国のミュージカルの舞台ってこんなに凄いのかと認識を改めるばかりだった。
売れないゲーム音楽作曲家でシングルマザーの主人公の部屋に、なぜか実在の探検家のアーネスト・シャクルトンが現れ、南極探検へと誘うという設定。シャクルトンというと、エンデュアランス号の探検で歴史に名前を遺している。南極横断を目指すが遭難し、しかし不屈の意志とチームワークで乗組員28人全員が生き延びて生還した。この探検の概要を予習しておくと、本作はより楽しめるだろう。
一点だけ残念なのが邦題である。「アーネスト・シャクルトンは私に恋してる」という原題からなぜかシャクルトンの姓を外し『アーネストに恋して』という邦題にした配給会社はいったい何を考えているのだろう。シャクルトンの名前では集客できないと考えたのなら、日本の映画ファンをずいぶんと馬鹿にしている話ではないだろうか。