ロンドンに暮らすムスリムの女性たちがパンクバンドを結成するドラマ『絶叫パンクス レディパーツ!』で脚光を浴びたニダ・マンズールが、長編映画監督デビューを果たしたのが本作。世間がムスリム女性に抱く「厳しい戒律にとらわれた保守的イメージ」に真っ向から挑みかかる、ハチャメチャなエネルギーに満ちた快作だ。
主人公のリアはムスリム家庭に生まれた高校生で、いつかスタントウーマンになるのが夢。ある日、姉のリーナがリッチな御曹司と結婚することになるが、画家を目指していたはずの姉が大人しく家庭に入るなんて考えられないし、許せない! リアはリーナの結婚を阻止しようと奮闘するうちに、リーナを陥れる恐るべき陰謀の存在に気づいてしまう。いや、陰謀はただの妄想?それとも真実? ともかくリアは親友たちの助けを得て《花嫁奪還作戦》を遂行するのだ。
とにかくケンカとなるとすぐにワイヤーアクションがおっ始まる奇想天外な世界観ながら、スクリーンから溢れ出してくるのは「女性を古い規範に押し込めるな!」という強い意思と怒り。ジャンルもノリも全然違うけれど、時代を動かし硬直した社会に風穴を開けようとする朝ドラ『寅に翼』にも通じるメッセージ性が、素っ頓狂なアクションコメディとして描かれていることが可笑しいやら頼もしいやら。上映館は決して多くないので、近場で観られるひとはぜひ飛び込んでみて!