アニメーションを構築する大切な要素の“色”と“音”。2009年のテレビアニメ『けいおん！』、『映画 けいおん！』(11)、『映画 聲の形』(16)などの山田尚子監督と脚本の吉田玲子がオリジナルストーリーで放つ本作は、まさにその2大要素(もちろん、それだけではないけれど…)を最大限に駆使して、いまを生きる若い人たちの“リアル”に迫った野心的な青春アニメーションだ。
人の“色”が見える主人公の女子高校生トツ子。高校を勝手に退学し、それを同居している祖母に伝えられないまま古本屋でバイトをしているきみ。母親に内緒で隠れて音楽活動をしているルイ。偶然出会った彼らがバンドを組んで、どんな“音”を奏でるのか？ そのとき世界はどんな“色”を帯びるのか？
そんなシンプルで繊細なアニメーション表現が、“いい子”を表面的には装いながらも、繊細で壊れやすい内面を複雑に揺れ動かす思春期の少年、少女にエールを送る。
水彩画のような淡い映像、ルイが演奏するテルミンの音色も心地いい本作が、次の1歩を踏み出す勇気をくれるに違いない。
