マット・デイモンといえば親友ベン・アフレックとは幼なじみで、一緒に映画製作会社を立ち上げた仲。ということはベンの弟ケイシー・アフレック(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー主演男優賞受賞)とも古い付き合いで、共演作が多い。ほぼマットとケイシーしか出てこない2002年のインディーズ映画『ジェリー』では、監督のガス・ヴァン・サントと3人で共同脚本も手掛けている。
AppleTV+で配信された新作『インスティゲイターズ ~強盗ふたりとセラピスト~』は、マットとベンがプロデュース、ケイシーが脚本を書いたマット&ケイシー主演の犯罪コメディ。息子のためにまとまった金がほしい退役軍人(マット)と皮肉屋のチンピラ(ケイシー)が現金強奪計画に参加するも、悪徳市長の汚職の証拠を握ってしまい、右往左往するというのが大まかな粗筋。
しかしこの映画、あまりプロットには意味がない。というか、おそらく主軸ではない。『ジャッキー・ブラウン』や『アウト・オブ・サイト』の原作者エルモア・レナードが描くような、クセのつよい小悪党たちの珍妙なやり取りと、どこに進んでいくのかわからない展開を楽しむ、淡々と真面目な顔でギャグをやっていくタイプのコメディなのだ。好き嫌いは分かれるかも知れないが、この飄々とした味わいは久しぶりだ。
ちなみに監督はマットと『ボーン・アイデンティティー』で組んだダグ・リーマン。3人目の主人公というべきセラピストにホン・チャウ、出番は少ないもののロン・パールマン、アルフレッド・モリーナら脇役陣もやたらと豪華。どこか懐かしさも漂う、スターたちの肩の力の抜けた風情を楽しんでほしい。