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2度目のはなればなれ

映画

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人は必ず歳を取る。若い頃は想像もできなかったことが、歳を取るにつれ身体の衰えに気づき、命のタイムリミットを感じ始める。そんな人生の後期にやりたいと思うことはなんだろうか。今ならそれが“懺悔”であると断言できる。だからこの映画が生まれたのだ。 映画は、戦時中に出会った老夫婦の馴れ初めからふたりが体験した感情を回想シーンとして織り交ぜながら、マイケル・ケイン演じる89歳のイギリス退役軍人が自分のトラウマであるはずのDデイの地・ノルマンディへとひとりで旅する物語だ。 青春時代に命をかけざる得ない状況下となった彼や退役軍人たちは、どんな思いでそこにDデイ記念式典に立っているのか。英雄と言われていることへの罪悪感や、拭いきれない苦しい記憶を抱えながらずっとベッドで眠りについていた半生を日常のショットとして描くことで、より現実味を帯びている。その横で妻はどんな思いで眠りについていたのか。映画では老人ホームで暮らす老夫婦が程なく離れ離れになるので、そのシーンは想像するしかないが、自分のトラウマと向き合おうとする夫を思いやる妻の言動から容易に光景が浮かぶのだ。 なんてチャーミングな俳優だろうと、マイケル・ケインの連れ合いを演じたグレンダ・ジャクソンを見て思った。これが遺作なのだと思うと寂しいが、人生の最期を悔いなく生きた役を最後に演じた、彼女の記念的な作品にもなっただろう。先人たちが「無意味な死」だと思った記憶を映画として現代に綴る。私はこの映画での墓地でのカットが忘れられない。