ゲームの世界にフランスの撮影隊が入り、そこで出会った人たちを取材するという斬新な趣向のドキュメンタリー作品。舞台となっているのは実在の「DayZ」というゲームで、ゾンビが徘徊する世界で生き抜くことが目的に設定されている。他のプレーヤーと仲間になったり、時には殺し合ったりすることもできる。体温や水分、空腹といった身体的な要素も採り入れられており、焚き火で暖をとったり食物を調達する必要がある。
こうしたゲームに慣れていないと、最初はキャラクターのCGのおかしな動きに違和感を感じ、なかなか作品世界に入り込めない。しかし、しばらく観ているとだんだんと慣れ、そういう違和感以上に不思議なプレーヤーたちがたくさん出てくるのに驚き、気がつけば夢中になってゲーム世界に入り込んでいる自分に気づく。他のプレーヤーを奴隷にし、殺し、残虐の限りを尽くしているチーム。共同体を守ろうと躍起になっている聖職者を名乗る人。他のプレーヤーは気にせず農業に夢中になっている人。自ら死を選ぶ人。
それはこの現実世界の戯画（カリカチュア）のようでもあり、悪夢のようでもあり、現実のような幻想のような、不思議な酩酊する感覚がある。“アイデア一発”の作品に見られそうだが、それ以上の深遠な人間観が本作にはある。一見の価値あり。
