東海テレビの「名張毒ぶどう酒事件」を主題にしたドキュメンタリーは本作で８作目になるという。その中で、『眠る村』などいくつかの作品を目にしてきたが、その都度、思うのである。「事件をこのまま終わらせてしまう＝闇に葬ってしまっていいのだろうか？」と。
いまから60年以上前に起きた事件ではあるが、その捜査と裁判のあり方は見過ごしてはいけない。いまを生きるわたしたちも濡れ衣を着せられて犯人に仕立てられる可能性があることを物語るからだ。
兄の無実を信じ、真実の解明を求め、獄中死した奥西勝さんに代わって再審請求を続ける妹の岡美代子さん。題名にある、彼女が歩んできた辛苦の時間を知ってほしい。
また、いまでは珍しくなくなったテレビドキュメンタリーの劇場版だが、その道筋を作ったのは東海テレビと同局の名物プロデューサー、阿武野勝彦の存在だ。『さよならテレビ』など数々の傑作を生みだしてきた阿武野にとって今作が東海テレビ最後の作品であることを最後に記しておく。
