監督のジン・オングはマレーシア人で、舞台もマレーシアだが、映画は台湾との合作である。タイトル通り、アバンとアディというふたりの孤児が肩寄せ合って生きてきて立派な青年となっているという設定で、アバンを台湾のスター、ウー・カンレンが、アディをマレーシアのスター、ジャック・タンが演じている。マレーシア映画と言えば有名なのはヤスミン・アハマドだが、テイストは違うが、多民族国家であることから来る寛容の思想などは共通しているかもしれない。
マレーシア内に約30万人いるというIDを持たない人々の生活と同時に、日本と同じく制度として残る死刑の問題も掬い取る社会派映画である。と同時に、(実際の兄弟ではないが)兄弟愛の映画でもあり、男性同士の愛とまではいかないが、その間にあるような、まだ名付けられていないような愛を描いた映画でもある。様々な感情や大切なものが詰まった映画は見応え十分。お薦め!