怪獣モノで“ご当地映画”に挑んだ八木順一朗監督もスゴいけど、その企画を通した監督の地元の岐阜県関市もあっぱれだ。
しかも、展開がまたいい。“ご当地映画”の製作を命じられた市役所・観光課の職員・山田(お笑いコンビ「春とヒコーキ」のぐんぴぃ)が、市長(清水ミチコ)に内緒で怪獣映画を撮り始めるものの失敗。そこまでは正直、地味な地方映画の典型的なテイストとタッチだけど、たぶんそれも八木監督の狙いに違いない。一度は挫折した山田が地元の人たちからの信頼を取り戻しながら、ダメな自分を変えるため、閉塞した地元の空気や“ご当地映画”の常識をぶっ壊すため、金をかけずに本物の怪獣映画を撮り始めるようになってから一気に盛り上がっていく。
そこでは怪獣映画が子供のころから大好きだった八木監督のこだわりや怪獣映画へのオマージュが散りばめられ、刃物作りや鵜飼などの関市の伝統工芸や産業、食や文化を劇中の映画制作に巧妙に取り入れながら紹介。山田の物語に本作を撮った八木監督と製作陣の奮闘や苦労が重なり、怪獣映画と地元への愛が同時に感じられるので、高鳴る怪獣映画っぽいサウンドに乗せられて、観る者も自然に熱くなるのだ。