ブルータリズムとはミニマリズム的な、装飾よりも構造そのものを見せる建築様式で、例としてはル・コルビュジエなどが挙げられる。ホロコーストを辛くも生き延びたハンガリー系ユダヤ人建築家が新天地アメリカで成功を目指すという壮大なフィクションで、215分もあるのだが、緩むことなく一気に見きった。
いわゆる“ホロコーストもの”は未だに量産されているのだが、事実は明確になっているので、新しい切り口も難しい。この映画は、主人公のラースローが建築家として新天地で新しいプロジェクトを手掛けていくところがメインで、ホロコースト自体の描写は多くない。だが、ホロコーストがいかに被害者の人生を蝕むかを他の要素で描き切っているとも言えるのだ。
具体的には、実際にラースローが創りあげていく建築物とその創作の過程がやはり素晴らしいし、妻エルジェーベトとの関係も胸抉られる。鬼才ラースローを演じたエイドリアン・ブロディはもちろん、エルジェーベトを演じたフェリシティ・ジョーンズも鬼気迫る演技である。ラースローをサポートする老資産家をガイ・ピアースが演じているのも驚かされた。編集や音楽も的確で、壮大な物語を重厚なエンタテインメントとして纏め上げている。監督のブラディ・コーベットは俳優としても活躍してきて、長編は3作目。今後も要注目である。