セプテンバー５

「スクープを撮る」報道の世界ではこの言葉が先行するそうだ。 本作は実際に起こったミュンヘンオリンピックでの人質テロ事件。この事件は生中継され話題となったが、このTVクルーに焦点を当て物語を作り上げたのが本作の監督である新鋭ティム・フェールバウムだ。密室劇とも言えるほど、放送局内のシーンが大部分を占めている。しかも現地でオリンピック中継を行うはずのアメリカのスポーツ番組スタッフが、手探りで報道を流そうと奮闘する姿がリアルだ。言語も分からない彼らの命綱となるのは英語を話せるドイツ人スタッフ。 突然、スクープを放送できると知ったスポーツ班が、躍起になってカメラマンを配置するも、上層部の承諾を得なければ流せないという典型的な壁にぶつかったり、ついスクープに目を奪われて人命を危機に晒すことをしたりと、かなりのやらかしが展開される。まさに密室エンタテインメントと言える圧巻の95分。個人的には米アカデミー賞脚本賞を獲るのではと踏んでいる。