Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

芸術・歴史的に必見の映画、映画展を紹介

岡田 秀則

国立映画アーカイブ主任研究員

横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ

横浜美術館が、長いリニューアルを経て帰ってきた。立体作品の間を縫って2階に上がってゆくあの動線も健在である。そして、待ちに待った展覧会の主題はまさに「ヨコハマ」。開港以来モダンの先端の地であったが、外国との軋轢にも直面した都市の像が描かれている。「みなと」の「みらい」も大切だろうが、まずはその光と影を見つめなければならない。 筆者の関心に沿って「シネマ」の眼で見つめると、まず横浜が女優原節子の生誕地であったことに改めて気づかされる。林忠彦による黒澤明『わが青春に悔いなし』撮影現場のスナップ写真には、一家を養う術として映画なる仕事を引き受けた保土ヶ谷の少女の、長じてなお怜悧かつクールなさまが透けて見える。 そして、横浜を舞台にした『霧笛』や『赤いハンカチ』、『天国と地獄』といった映画にも視野は及んでいる(展示のポスターは国立映画アーカイブ蔵)。その壁のすぐ裏で投影されているマレーシアの映像作家クリス・チョン・チャン・フイによる《HEAVENHELL》(2009)は、黒澤の『天国と地獄』の「地獄」たる横浜の底辺をモチーフとし、ゾンビのように夜の街をたゆたいながら目つきだけは鋭い男ども女どもを映し出している(最終ショットにふと現れる男は監督濱口竜介ではないか)。常盤とよ子・奥村泰宏夫妻の写真と並んで、過去を「なかったことにはしない」この展覧会の鍵となる作品に思えた。併せて3月7日から国立映画アーカイブで始まる上映特集「横浜と映画」にも通い詰めれば、近現代のヨコハマ文化史が一気に我がものとなるのではないか。 もちろん、館蔵品の豪勢な一挙公開や、松本竣介の一連の《Y市の橋》がこれだけ一堂に会す機会も貴重だろう。まだ始まったばかり、会期は6月2日まで。

25/2/16(日)

アプリで読む