tricotは中嶋イッキュウ（ボーカル＆ギター）、キダ モティフォ（ギター＆コーラス）、ヒロミ・ヒロヒロ（ベース＆コーラス）、吉田雄介（ドラムス）の4人組ロック・バンドだ。彼らが活動を開始した2010年は日本のバンドシーンの大きな転換期だった。
80年代のバンドブームの流れを受け継いだ90年代のバンドシーンはGLAYやLUNA SEAなど大規模なライブを行なうバンドが次々に現れ、一方でHi-STANDARDなど自律性の高いバンドも生まれた。
2000年代に入るとアジアン・カンフー・ジェネレーションなどが登場し、いよいよバリエーションの時代に入っていく。現代的なヒップホップや、70年代に一世を風靡したプログレロックなど、時代を超えたさまざまな音楽性をミックスしたバンドが活躍をし始め、2010年あたりにそうした動きが顕著になった。
tricotはそんな中でもユニークな存在だった。変則リズムを多用しながらも、なぜかメロディはキャッチーで歌詞も聴き取りやすい。ライブでは高い演奏技術を見せつけながら、迫力で押し切るちょっとおバカな中嶋イッキュウのパフォーマンスが魅力的。パワー、知性、センス、祝祭性などの奇妙なバランスが、まさにtricotでしかありえない調和を見せるのだ。たとえば1stシングル『99.974℃』のエネルギッシュな動画は、当時のバンド・ファンにとてつもない衝撃を与えたものだ。
ちなみに川谷絵音率いる破天荒なミクスチャーバンド“ゲスの極み乙女”も活動を開始したのは2012年頃で、その後、2017年に中嶋は川谷と“ジェニーハイ”というバンドで活動をともにするのは何か運命めいたものを感じる。ジェニーハイのメンバーには芸人の小籔千豊やくっきー！ が名を連ねていて、これまたとんでもないミクスチャー感を漂わせている。
そんなtricotのア二バーサリー・ライブはきっと見る者を刺激し、元気にしてくれるはずだ。10代限定のチケットは1000円。近所のロック好き少年少女を誘うのも楽しそうだ。
