ようやく紹介できる。昨年12月25日の北米公開前に幸運にも試写室で観た時からずっと僕は会う人にその素晴らしさについて熱っぽく語ってきた。ティモシー・シャラメが1960年初頭の社会的、政治的大変革を反映した音楽シーンを駆け抜けた若き日のボブ・ディランを完璧に演じている『名もなき者』。『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』『フォード vsフェラーリ』で実在の人物を映画化するうまさには定評のある名匠ジェームズ・マンゴールド監督は「私にとって、この映画の作り方はひとつしかなかった。それは演じるアーティストたちに魂からなりきるため、滲み出るような才能と野心と覚悟を持ち合わせた俳優を起用すること。……」とコメントしているが、ディランも感嘆の言葉を口にしたティモシーだけでなくピート・シーガー役のエドワード・ノートンにもジョーン・バエズ役のモニカ・バルバロにも音楽の神が降臨してきている。絶対見逃せない大傑作だ。