専門家と同じかそれを上回る熱量で映画をこよなく愛し、ラブ・ストーリーがとりわけ大好きと公言している中島健人が、『陽だまりの彼女』(13)、『アオハライド』(14)などで知られる恋愛映画の旗手・三木孝浩監督と初タッグ! フランスとベルギーの合作映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(19)をベースにした本作は、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)に匹敵する魅力を持った三木監督のファンタジックなラブ・ストーリーだ。
中島の演じたベストセラー作家リクと歌手の夢を諦めたmilet扮するミナミの立場が逆転する展開は、ありがちと言えばありがちだが、それが現代の空気とリアルにフィット。しがない編集者になったリクと周りの人たちとの会話が噛み合わないあたりも違和感なく見ることができるし、この普通ではあり得ない物語を成立させる役割を担うリクの職場の先輩に扮した桐谷健太やミナミの祖母を演じた風吹ジュンの言動も自然に受け入れられる。
そして何よりも驚かされるのは中島健人だ。『ラーゲリより愛を込めて』(22)での熱演も記憶に新しい彼が、とんでもない地獄を見ながら、それでも何とか状況を変えようとするリクを憂いの表情と持ち前の輝きを使い分けながら等身大で体現。苦悩する表情や涙で潤む瞳、それでもギリギリ消えない彼にしか出せない独特のオーラが映画を前向きに転がしていく。そして、それがmiletがステージで熱唱するクライマックスへと雪崩込む心憎い演出! 結末は容易に想像できる。その誰もが観たいと思っている最高のラストシーンに中島健人が連れていってくれるのだ。