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中山 ゆかり
ライター
横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ
25/2/8(土)~25/6/2(月)
横浜美術館
2021年から休館し、2024年の春に『横浜トリエンナーレ』の会場として一部を開館した横浜美術館が、全館リニューアルオープンをはたした。入館してまず感じるのは、パブリックスペースがフレンドリーな雰囲気になったこと。入ってすぐのグランドギャラリーは、トリエンナーレのときのように大型作品が設置されると実に映えるが、通常はいささかガランとした冷たい印象がかつてはあった。ところがそこに、色とりどりのピンクのまあるいテーブルと椅子が、花が開いたように並んでいる。彫刻が点在する大階段エリアにも、座って作品を見たり本を読めるカーペットやクッションがそこここに。 実は設計者の丹下健三は、外の広場とこの内側の広場的空間がつながった開かれた美術館を構想し、様々な工夫をこらしていたのだとか。建設されてから30数年がたち、当初の意図が見えにくくなっていた美術館の目指すところを「見える化」したのが、今回の大規模改修のかなめのひとつ。天井からは再び自然光が降り注ぎ、温かみのあるデザインの家具やサインが館を満たし、自由に時間を過ごせる無料エリアも増えた。 オープン記念展の『おかえり、ヨコハマ』には、「美術館が帰ってきた」という意味とともに、多様な人々やものを温かく迎え入れるという意図が込められているようだ。収蔵作品と市内の文化施設の作品も合わせて横浜の歴史をたどる構成だが、館の人気作品も、これまであまり紹介される機会のなかった作品も、そして新作も、気前よくふんだんに見せてもらえて得した気分になった。子ども向けワークショップに力を入れている館らしく、今回は会場内に「子どもの目で見るコーナー」もある。低い位置に掛けられた作品と、やさしい言葉使いながら奥が深い問いかけと、小さな椅子が並ぶこのコーナーでも、多様な層に展覧会を楽しんでほしいという意図が「見える化」していた。館は広大で、作品の深掘り解説も充実しているので、時間をたっぷりとっての来場がおすすめだ。
25/3/9(日)