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日本映画の新たな才能にフォーカス
イソガイマサト
フリーライター
花まんま
25/4/25(金)
丸の内TOEI
両親を早くに亡くし、大阪の下町でふたりきりで暮らす俊樹とフミ子の兄妹。そんなふたりの人情話がほのぼのとしたタッチで描かれるのかと思ったら、フミ子にはある秘密があって。しかも、その秘密は普通では考えられないもの。彼女には幼少期から自分とは別の女性の記憶があるというのだから、ただ事じゃない。 観る前にあまり情報を入れたくないので、映画を観始めてからそのとんでもない“秘密”を知ってしまい、えっ、そうなの?ってのけぞり、次の瞬間ちょっと不安になってしまった。自分がそういう作品が好みではないこともあるけれど、日本映画で現実世界にスピリチュアルな要素を持ち混んで成功している映画を観たことがなかったからだ。 でも、本作は違った。兄妹を演じた鈴木亮平と有村架純を始めとしたキャスト陣がその不思議な現実と真剣に向き合い、起こることに対してごくごく自然に対応していたから、“秘密”が装置に終わることなく、観ているこちらもどんどん引き込まれ、心を揺り動かされたのだ。 フミ子の婚約者・太郎がカラスの言葉が分かるという設定も、彼を演じた鈴鹿央士のほんわかしたキャラと相まって、まあ、そういう人もいるかもねと素直に納得。けれど、本作を成功に導いているのは、何と言っても鈴木と有村が作り上げた兄妹ならではの距離感が絶妙だからだろう。同じ関西人同士ということもあって、ふたりのかけ合いがめちゃくちゃ気持ちいい。特に有村に関しては、ここまでのびのびと動き、自然な関西弁でサバサバと自然にまくしたてる彼女は見たことがない。 クライマックスの結婚披露宴のシーンがあんなに微笑ましいものになったのも、ふたりが本物の兄妹になっていたからだ。
25/4/27(日)