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鋭い視点でアートの見方を指南
村田 真
美術ジャーナリスト
黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化
25/4/26(土)~25/7/21(月)
印刷博物館
「黒の芸術(Die Schwarze Kunst)」とはグーテンベルクが発明した活版印刷術のこと。発明当時は黒い文字の本が何冊もできたから、「芸術」というより「魔術」のように思われていたらしい。実際、信じられないほど美しいのだ。それが機械化され、デジタル化されていまや単なる「技術」に落ち着いてしまった。ところで、グーテンベルクで思い出すのが同時代のファン・エイクだ。前者が最初にして最高の書物を印刷したのに対し、後者は最初(ではないけど最初期)にして最高の油絵を描いた、というだけでなく、ファン・エイクは印刷術が発明される直前に装飾写本の挿絵を描いていたからだ。グーテンベルクは文字を芸術に、ファン・エイクは油絵を芸術に押し上げたが、しかし現在AIの発達により両者はともに存続の危機に直面している。
25/5/7(水)