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鋭い視点でアートの見方を指南

村田 真

美術ジャーナリスト

戦後80年 1945年の記憶

最近、1945年がなんの年か知らない若者が増えているらしいが、80年前のこの年以上に日本人が記憶に留めなければならない年はない。太平洋戦争終結の年であるだけでなく、夥しい犠牲者を出した東京大空襲、沖縄戦、そして広島・長崎への原爆投下の年でもあるのだから。その「1945年の記憶」をテーマにした同展の出品作家は、赤瀬川原平、石内都、篠原有司男、中村宏、吉野辰海の5人。すでに亡き赤瀬川は70年代の作品《ピカドン》と《終戦》を、唯一戦後生まれの石内は被爆した女性たちの遺品を撮った写真シリーズを、今年93歳の篠原と中村、85歳の吉野はそれぞれが体験した空襲、玉音放送、敗戦後の悲惨な礫死体などを記憶に基づいて描き出している。美術史家の菅章氏に倣ってこれらを「戦争記録画」ではなく、「戦争記憶画」と呼んでおきたい。

25/7/6(日)

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