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鋭い視点でアートの見方を指南

村田 真

美術ジャーナリスト

没後50年 髙島野十郎展

東京帝大を首席で卒業したものの、周囲の期待に反して画家の道に進み、時代に流されることなくひたすら独自の写実絵画を追求した「孤高の画家」。これが髙島野十郎のわかりやすい説明だが、このわかりやすさが髙島の絵を曇らせてしまう。帝大を主席で卒業したことは事実だが、それよりむしろ美術学校で学ばなかったことのほうが重要ではないか。世界を細部まで描き尽くそうとする彼の緻密な観察眼は、農学部水産学科で鍛えられたはずだが、もし美術学校で学んでいたらモダニズムの流れに抗しきれず、きっと放棄されていたに違いない才能だからだ。このように目に映るものをそのまま写すのではなく、ひとつひとつ分析して画面に再構築していく科学者的な態度は、あえていえばレオナルド・ダ・ヴィンチに通じるものがある。

25/7/31(木)

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