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夏目 深雪
著述・編集業
第38回東京国際映画祭
25/10/27(月)~25/11/5(水)
TOHOシネマズ 日比谷、 TOHOシネマズ シャンテ、 ヒューマントラストシネマ有楽町、 丸の内ピカデリー、 角川シネマ有楽町、 シネスイッチ銀座、 国立映画アーカイブ、 東京ミッドタウン日比谷、 東京宝塚劇場、 帝国ホテル 東京、 ヒューリックホール東京
恒例の秋の祭典だが、世相を反映してか、戦争に関する重厚な作品や、今までになく問題作・レアな作品が見られる。注目作を順に見てみよう。 マレーシア出身で台湾を拠点に活動するラウ・ケクフアットは、『島から島へ』で台湾人が日本兵として東南アジアで行った加害と被害を描き、金馬奨と台北映画祭で最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞した監督。日本でも劇場公開こそしなかったが、2月の沖縄環太平洋国際映画祭での上映を始めとして、秋に各大学で上映された。新作『人生は海のように』は父の葬儀でマレーシアに戻った主人公が、父が密かにイスラム教に改宗していたため、混乱に巻き込まれるという話。『島から島へ』は内容から劇場公開は難しそうだが、力のある監督なので本作はぜひ劇場公開してほしい。 『トンネル:暗闇の中の太陽』は、ベトナムのブイ・タック・チュエンがベトナム戦争を真正面から描いた作品。トンネルの中に身を潜めつつ戦うゲリラ兵士たちの3つの物語が壮大なスケールで描かれる本作は、ベトナムで大ヒットしたという。『漂うがごとく』『輝かしき灰』と女性を官能的に、または悲劇的に描いてきた監督だが、第3話は思いがけず妊娠した18歳の女性兵士の葛藤を描いているそう。テーマ的にはいわゆる国民映画であろうが、アート系とエンタテインメントのバランスのよい監督なので、期待大である。 『MISHIMA』はポール・シュレイダー監督が緒形拳主演で三島由紀夫の生涯を描いた作品。1985年の作品で同年のカンヌ映画祭で最優秀芸術貢献賞も受賞したが、同性愛的描写に関して夫人が反対し日本では公開が見送られてきた、幻の作品である。石岡瑛子が美術を担当しているのも見どころ。
25/10/19(日)